『ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』

 アニメSAOシリーズ初の劇場版。原作小説にはないオリジナルストーリーだ。時代は2020年代、SAOと呼ばれるフルダイブゲームに参加した人間は、ログアウトを許されずにデスゲームを戦った。その中でもゲームをクリアに導き、英雄と称えられた桐ヶ谷和人、プレイヤーネーム“キリト”はフルダイブMMOをプレイしながらも、デスゲームから離れた生活をしていた。

 その頃話題になってたのはVRではなくARのオーグマーという機器だ。これを用いたオーディナル・スケールというゲームが流行っていた。これに早速はまっていたアスナたちだったが、安全だと思われていたオーディナル・スケールの裏側にも大いなる野望が隠されていた。

 この作品は、ここ最近話題になっている拡張現実、ARを、元々のアニメ化された作品で扱っているVRと対照的に扱っている。話としては、嫌というほどVRの危険性と魅力を味わった主人公キリトが、今度はARの闇、というよりも悪用を阻むという話。SAO本編を見た人ならわかると思うが、SAOでの記憶を人質に取ったシナリオはVRの儚さ、脆さを証明しているとも言えるかも知れない。記憶の上でしか成り立たないSAOの世界はとても儚いものではあるが、VRもARも彼らにとっては変わらないかけがえのない世界にはかわりなかった。

 映画としては、特筆すべき点は作画とCGの質の高さ、それに伴う戦闘シーンの迫力にあるが、私が注目したのはこの物語の鍵を握る新キャラクター、ユナ役を務めた神田沙也加の存在である。筆者は『アナと雪の女王』の日本語版主題歌を歌った時に初めて名前を知ったが、歌手や舞台を主戦場に活躍する若手である。親が松田聖子で七光りだと思われているかも知れないが、特に歌の上手さは折り紙付きだ。この手のアニメ映画では新人・若手声優がこのような役には抜擢される傾向があり、やや力不足なことが多い印象だった。しかし、今回の神田沙也加は声優も卒なくこなし、歌は申し分のない上手さだった。ここまでマッチしていて意外性もあるキャスティングは近年稀に見るものだと思う。そういう意味でとてもいい映画を見ることができたと思っている。

子犬を畏れる男

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