『MOMAT コレクション 特集:藤田嗣治、全所蔵作品展示。』
2015年秋、国立近代美術館で行われた藤田嗣治作品の展示を振り返りたい。
この展覧会では、藤田の生涯に渡る年代の作品が揃っており、彼の作家人生を一望することができる展覧会になっていた。藤田といえば胡粉の白の裸婦像が有名であるが、彼の画風や、好んだモチーフはもちろん年代によって変化している。例えば、フランスに行ったばかりの頃は街角ばかり書いていたし、日本に帰った後は戦争画を描いていた。戦後は猫や子供など、可愛いモチーフを好んで描いた。このような彼の画家としての様々な側面を見ることができた貴重な展覧会だったと思う。
特に印象深かったのは晴れやかな空と戦車を描いた、《哈爾哈河畔之戦闘》(1941)だ。この作品は彼の象徴的な戦争画である、《アッツ島玉砕》(1943)や《血戦ダガルカナル》(1944)より以前に描かれた。同じ戦争画でもこうも雰囲気が変わるのかと驚愕したものだ。一方は晴れやかな空、一方は真っ黒に染まる空。対照的な風景だ。ただ、この変容は彼の戦争画を描く目的の違いから現れていると思われる。目的が違えば画風も変わる。当然のことなのかも知れない。
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